SSブログ

日大三の真実 [今日のスポーツニュース]

高校野球の記事で言えば、このスポルティーバの記事群はシャープで面白い。

【高校野球】相手守備陣を震え上がらせた日大三の強力打線
[Sportiva 2011年08月21日(日)]
田尻賢誉
 オーラが、ある。打ちそうなオーラ、ものすごい打球が飛んできそうなオーラ。そんな威圧感は、守っているチームに伝わる。打席に立ち、スイングを見せるだけで重圧がかかる。投手は落ち着いて投げられない。野手は落ち着いて守れない。そんな雰囲気を作り出せるのが日大三打線だった。その重量打線について、光星学院の三塁手・田村龍弘はこんな感想をもらした。
 「一言で言ったら、高校生じゃないですね。守っていて、いつもは『飛んで来い』と思うんですけど、横尾(俊建)さんの時は、正直『飛んでくるな』と思いました。『飛んできたらヤバいな』と思っていたら、ホントに飛んできてエラーをしてしまった(2回に鈴木貴弘のサードゴロを悪送球)。手も足も出ず、圧倒的にやられた。全国一のチームにふさわしいと実感しました」。
 威圧感を与え、相手のエラーを誘う。これが今年の日大三打線にはあった。3回戦で対戦した智弁和歌山の三塁手・嶌直広も初回二死三塁からの菅沼賢一のゴロを一塁へ悪送球した場面をこう振り返る。
 「横尾さんは見るからに打ちそうでした。エラーした時も打球が速くて、(体で)止めにいきました。止めにいくことしか考えていなかったから、そのあとの送球がああなってしまったんだと思います。(日大三打線は)初球からでも、チェンジアップでも全力で振ってくるので、前に行く積極性がなくなってしまった。格が違いました」。
 日大三打線のスイングスピード、打球の速さは、守っている者に恐怖感すら与える。痛烈なゴロで体が逃げてしまうこともあれば、「もし強烈なゴロが来たら……」と気持ちが引いてしまうから、打ち損なった打球には一歩目が遅れてバウンドが合わなくなる。強打のイメージが相手のエラーを生み出すのだ。
 今大会、日大三と対戦したチームの失策数は「10」。これは、最近10年間の優勝校の中で2番目の数字だ。エラーと記録された打球の他にも、一度は失策と判定されながら記録が訂正された智弁和歌山戦の横尾のセカンド横への痛烈なゴロなど、相手守備の乱れを誘うシーンは何度も見られた。
 もうひとつ、日大三打線のすごさを表すのが「33」という四死球の数。これも最近10年間の優勝校で2位の数字だ(1位はチーム打率2割3分1厘ながらしぶとい打撃を見せた2007年の佐賀北)。光星学院戦でも金子凌也がカウント3-0からスイングしたように、ファーストストライクから積極的に振っていくのが日大三のスタイル。その中で選んだ数だけに、相手投手がいかに警戒していたかがわかる。
 決勝でも先制点のきっかけとなったのは死球だった。3回、二死無走者から畔上が死球で出ると、横尾がライト前安打で続き、高山俊が先制の3ラン。簡単に二死を取りながら、クリーンアップを迎えて警戒し、厳しく攻めようとした結果が裏目に出た。
 甘いコースにくけば、たとえ正面でも相手のエラーを誘い、厳しいコースにくれば選球眼よく四死球になってしまう。これが日大三打線のすごさなのだ。それを自覚するかのように、核弾頭を務める清水弘毅はこんなことを言っていた。
 「初球から思い切り振ることを心がけています。ヒットで出たいですけど、ガンガン振ればフォアボールもデッドボールも多くなりますから。やっぱり、いい当たりをすれば相手も変わってくる。開星の白根(尚貴)も初めは笑っていて『いける』みたいな感じでガンガン来たんですけど、(第1打席でセンター前ヒットを打って)次は真剣な顔になっていた。気持ちで勝ったなと思いました」。
 スイングひとつで相手を震撼させるほどの猛烈な打球と積極性は、チーム打率3割9分3厘というチーム打率以上の恐怖を感じさせた。
 一方、守りも見事だった。3日連投となったエースの吉永健太朗だったが、光星学院の強打線を散発5安打に抑えて完封。危なげのない投球を見せた。決勝までは、対左打者の被打率1割3分に対し、右打者には2割9分8厘と打ち込まれていたが、この日は22打数3安打(1割3分6厘)。光星はレフトに徳島商戦で本塁打を放った右打者の和田祥真を起用してきたが、安打を許さない。川上竜平、田村、北條史也の自慢のクリーンアップにも合計9打数1安打。川上の内野安打1本だけに抑えた。
 「右バッターには内を使っていこうと思ったんですけど、今日はあまり(制球が)定まっていなかったので外中心に投げました。ストライクゾーンが広めなのがわかったので、そこを狙って投げるようにしていました」(吉永)。
 川上、田村から奪った三振は、いずれも外角のスライダーを空振りさせたものだった。テンポよく投げる吉永に引っ張られ、バックも無失策。全試合で合計2失策は、最近10年間では2004年の駒大苫小牧(1失策)に次ぐ2位タイ。打撃と吉永ばかりが注目されるが、堅実に守ったことも大きな勝因だった。
 光星学院にとって悔やまれるのが、0対0だった3回の攻撃。二死から澤辰寿がライト前安打で出たが、続く和田の2球目がワンバウンドになった際に飛び出し、タッチアウト。毎日練習しているワンバウンドの軌道を判断してのスタートだったが、中途半端で一塁に引き返してしまった。「アウトになるなら前の塁で」という走塁が徹底できなかった。
 「攻めの気持ちが足りず、足を活かせなかったのは悔いが残ります。(仲井宗基)監督からは『どんどん行け』と言われていたんですけど。得意の足を活かせなかったのは残念です」(澤)
 持ち味である足技での失敗が悪い流れを呼び、その裏に二死無走者から3失点。先攻だけに序盤に先制したかったが、逆に取られて余裕がなくなってしまった。足という得意技で波に乗れなかったのが最後まで攻撃のリズムを狂わせた。
 結果的に、日大三がリードを許したのは大会を通じて3イニングだけ。チーム打率4割2分7厘と当時の大会記録をマークした10年前同様、打線の脅威、恐怖を全国に示した2度目の栄冠だった。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:スポーツ

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。