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野口健はなぜ遺骨収集を始めたのか(4) [「シリーズ」日本人よ、何処へ行く]

アルピニスト・野口健はなぜ遺骨収集を始めたのか 遺骨収集シンポ詳報(4)
産経新聞 2009/09/22 14:43
国が真剣に取り組まねば(堀江)
 堀江正夫 約40年間、遺骨収集を続けていますが、(空援隊の)倉田さんのお話を聞いて、「本当に生き残ったものとしてはありがたい」と心から敬意を表したい気持ちです。
 ニューギニアについても共通している問題だと思っています。初期のころは、戦友がまだ元気でした。記憶も確かでした。その記憶に基づいて埋葬した場所、病院の跡を集中的に遺骨収集することができて成果も上がったのです。
 もちろん、その時点で戦後30年近くたっていたから、お墓も作った所が浸食されて海になってしまっていたり、地形がすっかり変わって見つからないところもありました。60年以上たった現在ではなおさらでしょう。
 政府の派遣団は、限られた人員が限られた日数で行く。計画はしたが、実際には行けなかったところもたくさんあるのです。厚労省の人たちも一生懸命やってくれているが、何分、スタッフも調査日数も限られている。現在は努力に対する成果が、あまり上がっていないのが現実です。ニューギニアでもフィリピンの空援隊に準じた方法をとれれば、成果があがるのではないかと思います。
 そもそも、国は遺骨収集の問題をもっともっと真剣に考えなくてはなりません。(担当の)厚労省外事室は20数人しかしませんし、(厚労省内の)地位も低い。もっと、予算も人員も調査日数も増やしてもらわなければいけないのです。小手先の対応ではなく、もっともっと抜本的に増やしてもらわなければなりませんね。
 ニューギニアではまだ1度も遺骨収集をやっていない地区がたくさん残っています。新たな情報も出て来ています。政府が民間に依存するのもいいが、政府が積極的に相手国政府と話してそういう情報をもらうべきなのに、やっていない。外務省との連絡が悪いんです。今後は遺骨収集のために、厚労省が在外公館に人を出すべきじゃないでしょうか。
 戦友はまだ若干は残っていますが、もう90歳前後ですからね。それでも「ぜひ遺骨収集に行かせてください」というのが何人かいるのですよ。

内閣府に省庁横断組織を(赤木)
 赤木衛 笹さんが『諸君!』に書いたように、このままのペースでは800年たっても遺骨収集は終わりません。
 これをドラスティックに変えるには、まず、地域ボランティアを拡充しなければならない。「郷土の先輩をお迎えしよう」という人たちですね。京都のレイテとか、旭川のガダルカナルとか、地域の(部隊の)先輩をごっそり根こそぎ動員されているケースは多いんです。それを地域の後輩が迎えに行くのです。
 もう一つは内閣府に特別室をつくって各省横断で遺骨収集に取り組むことです。拉致問題も最初は警察の公安セクションがやっていましたが、現在は内閣府で担当するようになりました。防衛省、外務省、厚労省などが、霞が関の縄張り意識に囚われるのではなく、横断組織に変えなければダメです。ニューギニア、フィリピン、硫黄島、インドネシアなど主要な戦場には、現地に連絡室をおく。そういことをするべきだと思っています。
 また、私が学生の頃、政府の派遣団による遺骨収集は1カ月でした。人員も最低30人です。ところがいまは2週間です。トランジット2日、3日。そこへ「現地大使館表敬」などという無駄なことをやっている。日本人が日本人にあいさつしてどうするのですか。これでは実際に遺骨を探す時間が減るばかりですよ。
 日本という国は国家がやるべきことを、ボランティアが身銭を切ってやっているのが現実です。それを「あれはだめ」、「これはだめ」と言っているのが役所なのです。いまこそオールジャパンでこの問題を考えていかなければならないでしょう(拍手)

時間がない、5年が限度(野口)
 野口健 僕はね、正直いってそれを国がやるとは思えないのです。われわれが現地で情報収集しているのは80歳以上の方々です。現地での感触は「あと5年で限界」なんです。情報がなくなれば終わってしまうわけですよ。だから国が動くのを待ってはいられません。
 繰り返しになりますが、僕には「国は動かない」というヘンな自信がある(苦笑)。ただ、待っていたって埒があかないから、まずは自分たちでできるのは「アクションを起こすこと」です。それから、国は動かないなら「予算を出してくれ」と。
 日本の遺骨収集における予算は現在約3億円。アメリカは約55億円です。せめて「予算を出してまかせてくれよ」というのが、現場で日々戦っている思いなんです。
 日本兵にとって、戦地に行って死ぬハードルは低かったのに、帰ってくるハードルがなぜこれほど高いのか?
 遺留品もたくさんあって、どうみてもこれは日本人のご遺骨だろうと思っていても、これまでは、政府が選んだ鑑定人のOKがなければ日本に持ち帰ることができなかったんです。ジャングルの洞窟で米兵やゲリラが集団自決しているハズがないでしょう。それなのに、いろいろな理由をつけて止めてきたのが国だったのです。
 この問題に関して国に期待はしていません。けれども、諦めてもいません。予算については、厚労省だけを批判しても仕方のないのです。国民の全体の土台、意識が低ければ、ダメなんですよ。でも、世論を動かすことは出来るのではないかな。国民の中から、「税金を遺骨収集につかってくれ」という意見があれば予算がつくのではないかと思います。
 残り5年で、どこまでできるか。精いっぱいやっていきたいと思ってます。
タグ:遺骨収集
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